1991年度作品。日本映画。
東京に暮らすタエコは田舎に対して憧れを持っていた。タエコは休暇に姉の夫の親類のある山形へ農作業を手伝いに行く。その旅の途中で、タエコは小学校5年生のころの自分を思い出していく。
監督は「火垂るの墓」の高畑勲。
声の出演は今井美樹、柳葉敏郎 ら。
昨日の金曜ロードショーで見た。何度もテレビ放映されている作品だが、まともに見るのは初めてだ。
さすがにジブリだけあって、映像美はなかなかのものだ。
そこにある田舎の風景はきれいで精緻であり、その美しさを堪能するだけでも心地よい。リアリズムを特色とする高畑作品ということもあり、細部まで凝っていることも、その美しさが引き出された要因かもしれない。
その高畑勲のリアリズムは、子供時代のパートで特によく生かされている。
ちょっと嫌味で生意気な感じの女子の姿や、生理の話、男子のイタイ行動など、小学校時代を思い出させるリアルな描写が多く、飽きさせない。それに主人公とかっこいい男の子が互いに意識し合う描写などは、甘酸っぱくってほんのりせつなくなる。
「おもひでぽろぽろ」というタイトルだけあり、いくつかのシーンでノスタルジーに浸ることができた。
しかし残念ながら、そういった良さは部分的なものにすぎない。全体を見るなら、本作はいささか退屈ですらあった。
それはテンポがまったりとしすぎていて盛り上がりに欠けることと、何より主人公を好きになれなかったのが大きいだろう。
ここでは田舎に憧れている女性が描かれている。こういうLOHASな世界を夢見る都会の女性は実際の世界でも存在しそうで、そういう意味では良くも悪くもリアルだ。
しかし田舎に望まない形で住み、醜い部分をたくさん見てきた身としては、彼女の都会人らしい憧れがどうにも容認できなかった。実際の田舎は親切ばかりでなく、映画にもあったように、当人を抜きにして嫁に来た場合の話をするいやらしさがある。
確かにラストで主人公は、甘い憧れを自戒し、田舎に暮らすということに対しての覚悟を固めているが、それでも彼女の姿に共感することはできない。
この映画に良い面があることはまちがいない。
しかし個人的な好みと事情により、僕はそれほどこの作品を好きになれそうにはない。残念な限りだ。
評価:★★(満点は★★★★★)
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